はじめに
再生医療は今、医療の世界において最も先進的な分野であり、今まで治療困難であった疾患に対して新たな治療の道を開くものであり、人類の未来にとって大きな希望といえます。
今までの治療では満足できなかったという方も、再生医療であれば、従来とは異なる治療法の選択肢が増え、満足度の高い治療を受けられる可能性があります。
そんな再生医療とは、どんな治療なのか、また、どんな効果が期待できるのか、安全性は大丈夫か?など気になる点も多いかと思います。
歯科医療で行われている再生医療について、この記事で理解を深めていただければと思います。

歯科領域における再生医療とは?
現在、歯科領域で活用されている治療としては、インプラント治療、重度の歯周病治療、歯槽骨や歯周組織の早期再生、親知らず等の抜歯後の歯肉や傷口の治癒促進などに活用されています。

そして、日本の歯科医師に活用されている再生医療がCGF (Concentrated Growth Factors)と呼ばれる治療法です。英語を直訳すると『集中成長因子』のため、ここでは『成長因子を利用した再生医療』と考えると分かりやすいでしょう。
例えば、人がケガをすると、傷口にかさぶたが覆い、傷口をふさぐことで出血を止めます。これは、血液中に含まれる血しょうが働き、各細胞に栄養やホルモンを運ぶほか、刺激が加わることで修復因子を放出することによる作用です。
この修復過程で作られる物質のひとつが「フィブリン」とよばれる成長因子です。「CGF」は、この「フィブリン(成長因子)」を濃縮したものであり、患者自身の血液を採血して作ります。
血液中に含まれる血小板とフィブリン。これらは止血に重要な役割を果たします。
また、自分の血液内から、濃縮された止血成分を取出して使用することで、インプラント手術時のキズの治りを早くしたり、骨や歯周組織 の再生・回復を早めます。
さらに、CGFの生成には15分程度でできるため、手術をする際などにおいても、ほとんど同時進行で準備に入ることができることも大きな特徴です。
CGF治療(次世代PRP再生療法)について
CGFとは、専用の遠心分離器で患者自身の血液を遠心分離して生成したフィブリンと傷の治癒や組織の再生に有効な血小板や成長因子を濃縮したゲル状の塊です。

遠心分離器の回転数をコントロールして遠心分離することで、血を固めようとする血液の成分が刺激されて、自身の血液のみから作られる完全自己血由来のフィブリンゲルを生成することができます。

インプラント治療では、骨が足りない場所にCGFを填入したり、膜状にして骨を覆って骨の再生・治癒を促進したりするのに使用します。 CGFは添加物を入れずに、自身の血液のみで生成できるので、従来の骨移植で懸念されていたアレルギーや感染のリスクが軽減し、より安全に、患者様のお体への負担が少ない治療が期待できます。
【CGF再生療法を実施されている方】
・顎の骨が少なくてインプラント治療が今までできなかった方
・できるだけ短期間で、且つ負担が少ない治療を行いたい方
【CGF再生療法で期待できること】
・傷の治り、骨や歯肉の再生が促進され治癒期間が短縮
・完全自己血液由来によりアレルギーや感染のリスクを軽減
・インプラント体と歯槽骨(しそうこつ:歯を支える骨)の早期の結合
・歯槽骨、及び歯周組織の再生を促進
※患者自身の症状や治療法等により個人差があります
他の治療法とどう違うのか?
ほかの方法と比べてCGFが優れている点はどこにあるのでしょうか。
CGF治療は応用範囲が広いとういのが特徴です。
ゲル状の膜を生かして、フレキシブルに加工できるため、膜を厚くすれば、患部にしっかりとした骨の土台を築くことも可能です。
また、ノリのように流れていくこともないため、盛り込むという施術が行え、骨を癒着する場合の「支え」として使用することができるのです。
幅広い使い道があるものの、自身の少量の血液さえあれば作成できるため、治療リスクも少ないことが、「CGF」ならではの大きな特徴と言えます。

どんな歯科医療に利用されているか?
①歯科インプラント治療
インプラントを埋めるのに、アゴの骨の量が足りず骨を移植する場合、移植する分量を少なくすることができ、侵襲が小さくなります。

②重度の歯周病治療
歯周組織治療の際、歯槽骨(歯を支えている骨)並びに歯周組織(歯と歯ぐきのつなぎ部分等)の再生を早める治療
③抜歯後の歯肉の治癒促進
親知らずの抜歯後の傷の治癒を促すために用いられたりします。
副作用等はあるのか
再生医療は非常に魅力的な治療ですが、副作用なども事前に理解しておくことが必要です。
〇副作用(腫れや出血など)
いづれの治療においても、針を刺すときの軽い痛みの他、出血、腫れる場合がありますが一時的なため、1日~3日程度ですぐに治まると言われています。また、ごくまれに一時的に発熱する場合があります。いずれも時間とともに解決されます。
※腫れ方や炎症の強さには個人差がありますので、治療前に医師からしっかりと説明を受けて理解した上で施術を受けることが重要です。

診療費はどうなの?
これらの再生医療は、安全性が確立され、効果が出ているものの、最新治療のため、原則自費診療での提供となります。
歯科治療でおこなわれる再生医療は、部位や施術する量などにより異なりますが、自家血小板含有フィブリンゲル(CGF治療)を利用した口腔内組織の再生医療の料金は2万円~5万円程度が一般的のようです。
クリニックによっては各治療費などに含むとして表示しているところもありますので、各クリニックのHP等をよく確認して、施術前に医師より詳細な説明を受け、自身で理解・承諾したうえで診療を受けるようご注意下さい。
※上記料金は厚生労働省に届出された再生医療等提供計画書に記載された価格を参考にしています。
最後に
以上のお話の通り、再生医療による歯科領域はこれから医学の進歩とともに益々発展が見込まれる分野で魅力的な医療です。
また、今までの治療では得られなかった効果や選択肢を増やすことが可能となりました。
しかしながら、最新医療にあたるため、まだ始まったばかりであり、長期にわたる臨床結果(エビデンス)が十分ではなく、何等かのリスクの可能性があるということは良く理解したうえで、施術をされることをお勧めします。
