【卵巣機能改善】
最近の不妊治療での比較的新しいアプローチとして子宮内膜より更に元の部分である卵巣の機能改善(若返り)治療がございます。
卵巣年齢の評価
卵巣年齢は、卵子のもとになる原始卵胞が発育する過程で分泌されるホルモン「抗ミュラー管ホルモン(AMH)」の値を調べることで「残っている原始卵胞の数の目安」を推計して算出しています。AMHは卵巣にある前胞状卵胞から分泌されるホルモンで、卵巣に残っている卵胞数の指標となります。
また、「卵胞刺激ホルモン(FSH)」と呼ばれる下垂体から分泌される排卵を促すホルモンがあり、卵巣機能が低下するとこの数値は上昇していきます。
よって主にAMHとFSH、さらに胞状卵胞数(AFC)、これら三つの指標をみることでおおよその卵巣年齢がわかります。
※ここで言う卵巣年齢とは主には「残りの卵子の数」が影響しますが、それだけで全てが決まる訳ではありません。
AMHは原始卵胞が卵子へと発育する過程で分泌されるホルモンですので卵巣年齢が高い(AMHが低い)場合に考えられることとしては、そもそも原始卵胞が少ないのでAMHが低い場合と、原始卵胞はたくさんあるのに卵子の発育が上手くいかず分泌されるAMHが少ないという場合も考えられます。
女の子の新生児は卵巣には約200万個の卵子が蓄えられた状態で生まれてきますが、生理が始まる思春期にはおよそ20~30万個にまで減少します。
卵子は1ヶ月(1回の生理周期)に約1000個ずつ減少、消滅していきます。「卵子は月に1個だけ排卵されるのだから、1個だけ減るのでは?」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、卵巣内では複数個の原始卵胞が同時に発育し、そのなかでも成熟した1つの卵子のみが排卵され、残りの卵子は成熟過程で消失しているのです。
卵巣機能不全とは、卵巣がその使命である排卵を起こすのが困難になっている状態です。具体的な症状では月経周期の乱れや無月経など、さまざまな障害が引き起こされている状態です。月経周期が乱れることに伴って、月経血の量に増減が生じたり、1回の月経期間に変化がみられたりすることもあります。
思春期前の若年女性から閉経前後の女性まで、幅広い年代で発症し、発症時期によって現れる症状に違いがみられます。卵巣機能低下症や卵巣機能障害と呼称されることもあります。妊娠可能年齢での卵巣機能不全は不妊症や不育症につながる場合があるほか、放置すれば早期に閉経にいたる可能性もあります。
卵巣機能不全の原因としては、主に卵巣の老化によるものと卵巣腫瘍によるものがあります。その他過度なダイエットや運動、精神的ストレスなども挙げられますが、原因をはっきりと特定できないケースもあるとされます。
また老化や腫瘍と関係なく卵巣機能が早々と衰退してしまう方もいます。30代後半〜40歳前半で無月経となり閉経に向かう“早発閉経”です。早期卵巣不全やゴナドトロピン低下性卵巣症候群と表現することもあります。
卵巣機能不全が疑われる場合には、とにかく早い妊娠を心がけるしかない、とも言われております。
いくつかの治療法が提唱されておりますが、最も新しく、注目されているのがPRP(多血小板血漿)を利用した再生医療となります。
PRP療法とは?
例えば83人の女性を被検者とした研究があります。(46人は多血小板血漿治療を受けた治療群、37人は治療を行わなかった比較群。平均年齢は41歳。治療群において、治療の前後のFSH、AMH、AFCの有意な改善が認められ、比較群では、FSH、AMH、AFCの変化は認められず。比較群に対して治療群の生化学的妊娠率、臨床的妊娠率は、有意に高かった(生化学的妊娠率26.1% vs. 5.4%、臨床的妊娠率23.9% vs 5.4%))
この研究によると、卵巣への多血小板血漿注入は、卵巣予備能の指標を改善させる、と結論づけられています。(出典論文:Melo P. et al. J Assist Reprod Genet, 2020 Apr; 37(4):855-863; 関連論文Sillis ES et al. Gynecol Endocrinol. Sep 2018; 34(9): 756-760)
※PRP治療に似たものに、PRPの派生物をフリーズドライ化した粉末に生理食塩水を混ぜたものを用いた治療法も存在しますが、こちらは再生医療等安全確保法で規定された再生医療とは異なります。
年齢が上がるにつれて妊娠の可能性が下がるのは事実ですが、近年の研究では、一度、早期閉経を迎えてしまった方が最新のPRP卵巣機能改善治療を受けて出産された方もいらっしゃいます。(出典論文:Sfakianoudis K. et al. J Clin Med. 2020 Jun 10;9(6):1809.)
他の不妊治療で成果のでなかった方や、妊娠したものの残念ながら出産に至らなかった方は一度最新のPRPを利用した卵巣機能改善(若返り)再生医療をご検討されてはいかがでしょうか?