不妊治療の現状
晩婚化などで不妊に悩む男女が増えている現在、不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は18.2%であり、これは夫婦全体の5.5組に1組の割合になります。
実際に2017年に日本では56,617人が生殖補助医療により誕生しています。これは全出生児(946,065人)の6.0%に当たり、約16.7人に1人の割合となっており、年々増加しています。
ただそうはいっても、不妊治療を行っていても中々妊娠に至らず、悩んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は再生医療を使った不妊治療をご紹介いたします。
不妊治療における再生医療について、この記事をご参考にしていただければと思います。
不妊治療におけるPRP療法(子宮内膜へのアプローチ)
PRP療法は、再生医療の一種で、ご自身の血液由来の多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう、Platelet Rich Plasma)を用いた治療法です。
血小板に含まれる様々な成長因子やサイトカインは細胞の増殖や成長を促す効果があります。
子宮内膜が厚くなりにくい方に対して成長因子を多く含むPRPを子宮内に注入することにより、子宮内膜における細胞増殖、血管新生を促し、子宮内膜環境の改善を促すことで、受精卵が着床しやすくなると考えられています。
不妊治療での再生医療の歴史は長くはありませんが、海外では産婦人科領域における不妊治療にPRP療法が応用されております。
PRP療法の流れ

PRP療法の流れとしては以下の手順で行われます。
1.血液を採取する
2.採取した血液を遠心分離機にかける
3.血漿(PRP)部分を抽出し、調整
4.PRPを子宮膣内に注入する
※通常、治療後の安静も含めて約1時間程かかります。
安全性・副作用は?
PRP療法は、ご自身の血液を使い、培養過程が不要なため、副作用が起こる可能性は低く、体にも負担が少ないと考えられています。ただし、子宮内へ注入する際に痛み等がでる可能性はございます。
臨床研究の成果
日本産科婦人科学会において発表されたデータを以下に紹介します。
【方法】
2019年3月から9月に難治性不妊症患者40人にPRP療法を実施しました。
平均年齢は41.1歳(32-51歳)、PRP投与は移植周期9-10日目に1回目、その48時間後に2回目を施行しました。
【成績】
平均子宮内膜厚は、PRP投与前6.0±1.89mmに対して、PRP投与後7.5±2.46㎜で有意に増加しました。
妊娠例は40例中、9例(22.5%)あり、内膜肥厚が観察されない症例でも妊娠例が見られました。
有害事象は1例で、子宮内膜症性嚢胞合併症例の子宮内膜炎でした。
第71回日本産科婦人科学会学術講演会にて「菲薄化した子宮内膜に対する多血小板血漿(PRP)を用いた不妊治療研究」の発表を行いました。 – 産婦人科PRP研究会 (ogprp.org)
治療費は?
PRP療法は2021年現在、日本では保険診療として認められていません。
自由診療となるので、病院によって治療費は異なります。
ただ、多くの病院では月経周期(月経が始まった日が1日目)の10日目と12日目の2回、PRPを子宮内に注入することが多く、2回で大体15万円から25万円くらいで提供されているようです。(2回目のPRP注入はご本人様が希望すれば省略することも可能です。)
医療機関により異なりますので、医師より詳細な説明を受け、自身で理解・承諾したうえで診療を受けられるようご注意下さい。
※上記料金は厚生労働省に届出された再生医療等提供計画書に記載された価格を参考にしています。